前回までは紆余曲折のストーリーを中心に、「Reference35」に直接つながるプラグサプライヤーとの出会いや、さらなる非磁性の追求についてお話しました。今回からは少し変わって、寸法や仕様など、設計上のこだわりをご紹介して行きます。製品の隅々まで込めたこだわりを感じて頂ければ幸いです。
■音質を大きく左右する筐体
オーディオ機器で音質を左右するのは、電気回路やパーツのグレードのみならず、様々な要素が関係します。筐体もその一つです。特にわたくしがライフワークとして続けてきた、高周波ノイズを吸収することで高音質化を狙うというコンセプトも、各種機器の基板上のパターンに回路として埋め込むより、しっかりとした筐体を持つ個別品として完成させてプラグインとする方が、より高い効果を得られると感じてきました。パナソニックのフラッグシップ4Kブルーレイディスクプレーヤー「DP-UB9000」やブルーレイレコーダ「DIGA DMR-ZR1」では、「USBパワーコンディショナー回路」として内包され、音質と画質の両面で高い評価を得ていますが、コストやスペースが許されれば、また違った手法をとっていたかもしれません。

【写真】「Reference35」実物。面取りしているので薄く見えますが、肉厚を1.5mmとしました。因みに一般的な用途では小型軽量を優先し、このサイズ感であれば、強度が充分に確保できる0.5mm~1.0mmくらいに設定するようです。
「Reference35」では、筐体は非磁性かつ音質面でも気に入っている真鍮材を使用し、肉厚を1.5mmとしました。これは、「ユキム PNA-RCA01」の同1.0mmに比べ1.5倍もの厚みです。金属としてボリュームのある筐体が仮想アースとしてより高い効果を発揮するという理屈です。
ポータブル機器との組み合わせを想定し、使い勝手を考えると筐体は極力コンパクトにいたい想いもありましたが、検討に検討を重ねて内径をギリギリまで小さくすることで実現しました。これにより、量産時は、内部回路を寸法面で精密に組み立てる必要があるなど難易度は高くなってしまいしたが、ひとつずつ丁寧に手作りすることでカバーしています。大変な作業ではありますが、皆様に楽音倶楽部が理想とする「音」をお届けできるよう、日々努力しています。
次回は、筐体の表面仕上げに関するこだわりをご紹介します。過去の経験に加え、何度も試作して辿りついたこだわりの仕様ですので、お楽しみに!
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