前回は、トープラ販売社製プラグを使用して量産直前まで漕ぎつけたものの、やむを得ない事情によって製品化に至らなかったお話をしました。
今回は、新たなプラグメーカー探しと検討の経緯についてです。結論から述べると、Reference35としての製品化には至りませんでしたが、過程や経験としてお伝えできればと思います。
製品化を進めるには、新たにパーツを供給して下さる企業を探さなくてはなりません。しかし、日本国内でオーディオ用のハイグレード品となると、ほぼ見つからない状況でした。トープラ販売さんの廃業もそうですが、エレクトロニクス製品の生産地が中国を筆頭とするアジア地域へと移って久しく、残念ながら当然の流れと言えます。
丹念に調べた結果、望みをかけて門を叩いたのはD社です。D社はハイエンドオーディオ用端子の設計や製造を手掛けている会社で、近年は自社ブランドで付加価値の高い製品を販売されるなど精力的に活動されています。みなさんも良くご存知かもしれませんが、ここではD社と伏せておきます。D社は銅素材の独自のφ3.5mmステレオミニプラグをラインナップされ、製造工場こそ海外ながら、日本で経験豊かなエンジニアと詳細な打ち合わせができるのも魅力に感じました。
D社は少し規模の大きな会社ですが、現行生産品をベースに加工する方法であれば、楽音倶楽部が想定する比較的小ロット(1度に生産する数量)も不可能ではないとのこと。構造の検討と見積もりを依頼することにしました。中国の一般的な工場では全く取り合ってもらえない数量規模でしたが、快く図面作成まで頂いたのはありがたかったです。
見積もり結果は、全く手が出せない水準ではないものの、最終製品が想定よりも高価になってしまう課題が残りました。音質が良くても、価格が例えば2倍になってしまうと、当初の「より多くの方々に楽しんで欲しい」という想いにも反します。図面作成を伴った詳細見積もりまで行って頂いて申し訳ない気持ちもありながら、D社での製造は断念することにしました。
しかし、D社で標準的に製造している真鍮製φ3.5mmステレオミニプラグをそのまま使う場合は、量産効果の恩恵を受けてリーズナブルな価格で入手できることが分かりました。当初の商品企画でミドルクラスと考えていた「竹」には適しそうで、良い出会いであったと思います。いろいろな企業と関りを持つと、さまざまな知見や新しい考えに触れることができ、今後の製品をより良くできそうな貴重な体験でした。

【写真】D社の標準製造品をベースに作った「竹」の試作品。「竹」のコンセプトは、Reference35よりも更に小型かつ低価格化を図り、主にDAPとの組み合わせを想定。小型化実現のためにコンデンサーのみで構成しましたが、狙い通りの音質改善効果が確認でき、商品化に向けての可能性を感じました。
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