· 

PNA-RCA01 開発ストーリー④ 「真鍮削り出しケース」

意外かもしれませんが、実は、ケースが最終的な音質を大きく左右します。

過去の経験ですが、シール1枚を貼っただけで、全くダメになったこともありました。また、ネジで固定する方式の筐体は、形状に加えネジの締め付けトルクも音に影響を及ぼすので、設計だけでなく、生産管理にも苦労した経験があります。

PNA-RCA01では、真鍮削り出しケースを採用しました。真鍮(ブラス)は金管楽器にも使われる素材で、削り出しにより継ぎ目も無いのも特徴です。

 

最終的に、挽き物と呼ばれる切削加工は、幸運にも職人気質の高いこだわりを持つ熟練技術者に出会い、表面が平滑でキズも非常に少なく仕上がりました。途中、いくつかの業者に試作を依頼しましたが、美しいモノは音質も良い。これもまた、オーディオの難しくも面白いところです。

 

因みに、真鍮ケースは筒状で、肉厚の違いも音質を左右します。肉厚で重量があれば良いというものでもなく、試作と試聴を繰り返して決定しました。

 

また、ネジの嵌合も音質を左右することが分かりました。製造上のバラつきを考慮しつつ遊びが最小になるよう、0.01mmオーダーで調整。結果、満足の行く音質に仕上がりました。見た目は単なる真鍮に見えるかもしれませんが、日本の熟練した職人技があってこそ完成したものです。

 

塗装も音質を左右します。真鍮の酸化を防止するためにクリアコートを施していますが、塗料はエポキシ、ラッカー、アクリルなどいくつかの選択肢があり、今回は試作と試聴で精査しました。結果、音質を最重視して決定しました。この方法は、乾燥に時間が掛るため、真鍮ケース部にホコリが付着する場合がありますが、生産性よりも音質を重視した結果として、ユーザーの皆様にもご理解を賜りたいと思っています。

 

なお、酸化を恐れず真鍮素地のままという選択肢もありますが、試聴テストの結果、塗装した方が低域に伸びが感じられて好ましいと判断しました。酸化防止という機能面から始まった検討ですが、最終的に音質面でプラスに働き、新しい発見でした。

 

【写真: 妥協なく美しく仕上げた最終製品】